目次
- 1 2.「取得費」とは?
- 2 3.昔買った不動産で「購入価格が分からない」場合は?
- 3 4.「譲渡費用」とは?
- 4 5.不動産の所有期間によって税率が変わる
- 5 6.2026年に売却する場合、長期・短期の判定は?
- 6 7.マイホームを売却した場合は「3,000万円特別控除」がある
- 7 8.10年以上住んでいたマイホームには「軽減税率」の特例も
- 8 9.相続した実家・空き家を売却するときにも特例がある
- 9 10.相続した不動産の「取得費」はどうなる?
- 10 11.実際にどれくらい税金がかかる?計算例
- 11 12.「売却価格-購入価格」だけで計算するわけではありません
- 12 13.売却して「損」をした場合は税金がかからない?
- 13 14.不動産を売ったら確定申告が必要?
- 14 15.不動産を売る前に確認しておきたい書類
- 15 16.不動産売却時の税金は「売却前」に確認することが大切
- 16 まとめ
譲渡所得税の計算方法と知っておきたい特例をわかりやすく解説
「家や土地を売ったら税金がかかるの?」
「売却した金額にそのまま税金がかかるの?」
「相続した不動産を売った場合はどうなる?」
「3,000万円控除って聞いたことがあるけど、誰でも使えるの?」
不動産を売却するとき、このような疑問を持たれる方は少なくありません。
実は、不動産を売却したからといって、売却金額のすべてに所得税がかかるわけではありません。
不動産を売却したときの税金は、売却価格から、その不動産を取得したときにかかった費用や売却のためにかかった費用などを差し引いて計算した「譲渡所得」をもとに計算します。
さらに、マイホームを売却した場合などには、一定の条件を満たすことで「3,000万円の特別控除」などの特例を利用できる場合があります。
今回は、不動産売却時に知っておきたい「譲渡所得税」について、できるだけ分かりやすく解説します。
1.不動産を売却すると必ず所得税がかかる?
結論からいうと、不動産を売却して利益が出た場合でも、一定の特例を利用できる場合があるため、必ず税金が発生するとは限りません。
不動産を売却した場合は、一般的に次の計算によって「譲渡所得」を求めます。
譲渡所得の基本的な計算式
売却価格 -(取得費+譲渡費用)= 譲渡所得
さらに、適用できる特別控除がある場合は、
譲渡所得 - 特別控除額 = 課税譲渡所得金額
となります。
この「課税譲渡所得金額」に税率をかけて、所得税・住民税などを計算します。
土地や建物の譲渡所得は、給与所得などとは分けて計算する「分離課税」です。
2.「取得費」とは?
取得費とは、簡単にいうと、売却した不動産を取得するためにかかった費用です。
例えば、購入した土地や建物であれば、
・土地の購入代金
・建物の購入代金
・建築費
・購入時の仲介手数料
・購入時の登録免許税や登記費用
・不動産取得税
・印紙税
・設備費や改良費
などが取得費に含まれる場合があります。
ただし、建物については注意が必要です。
建物は年月の経過によって価値が減少するため、購入価格や建築費をそのまま取得費として計算するのではなく、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。
3.昔買った不動産で「購入価格が分からない」場合は?
相続した不動産や、何十年も前に購入した不動産の場合、
「当時の売買契約書が見つからない」
「いくらで購入したのか分からない」
というケースがあります。
このような場合、取得費が分からないからといって、必ずしも取得費がゼロになるわけではありません。
実際の取得費が分からない場合などは、売却価格の5%相当額を取得費とすることができます。
例えば、3,000万円で不動産を売却し、取得費が分からない場合、
3,000万円 × 5% = 150万円
として、概算取得費を計算することができます。
ただし、実際の購入価格が分かる場合には、資料を確認して計算したほうが有利になるケースもあります。
そのため、古い不動産を売却する場合は、購入時の売買契約書や領収書などが残っていないか、まず確認しておくことが大切です。
4.「譲渡費用」とは?
譲渡費用とは、不動産を売却するために直接かかった費用です。
代表的なものとして、
・売却時の仲介手数料
・売却のための測量費
・売却に伴う登記費用など
・建物の取り壊し費用など、一定の要件を満たすもの
などがあります。
国税庁では、譲渡に際して支出した仲介手数料や運搬費、登記・登録に要する費用など、譲渡のために直接要した費用を譲渡費用として挙げています。
ただし、不動産売却に関係する費用なら何でも譲渡費用になるわけではありません。
実際にどの費用が対象になるかについては、個別の事情によって判断が必要です。
5.不動産の所有期間によって税率が変わる
不動産の譲渡所得税で特に重要なのが「所有期間」です。
土地や建物を売却した年の1月1日時点で、
所有期間が5年を超える
→ 長期譲渡所得
所有期間が5年以下
→ 短期譲渡所得
となります。
税率は次のように異なります。
| 区分 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 15% | 5% |
| 短期譲渡所得 | 30% | 9% |
さらに、所得税には復興特別所得税が加算されます。
そのため、単純に考えると、
長期譲渡所得:約20.315%
短期譲渡所得:約39.63%
が基本的な税率となります。
同じ金額の利益が出た場合でも、長期譲渡所得と短期譲渡所得では税負担が大きく異なる可能性があります。
6.2026年に売却する場合、長期・短期の判定は?
例えば2026年中に不動産を売却する場合、
2026年1月1日時点で所有期間が5年を超えているか
によって判定します。
2026年中に売却する場合、原則として、
2020年12月31日以前に取得した不動産
→ 長期譲渡所得
2021年1月1日以降に取得した不動産
→ 短期譲渡所得
となります。
ここで注意したいのが、相続で取得した不動産です。
相続したからといって、相続した日から新たに所有期間を計算するわけではありません。
相続の場合は、原則として被相続人が取得した時期を引き継いで所有期間を判定します。
7.マイホームを売却した場合は「3,000万円特別控除」がある
不動産売却で特に知っておきたい制度が、
「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」
です。
一定の要件を満たすマイホームを売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度があります。
例えば、
売却価格:3,500万円
取得費+譲渡費用:1,000万円
だった場合、
3,500万円-1,000万円=2,500万円
となり、譲渡所得は2,500万円です。
このケースで3,000万円の特別控除が適用できれば、
2,500万円-3,000万円=0円
となり、課税譲渡所得金額は0円となります。
つまり、譲渡所得税がかからないケースがあります。
ただし、3,000万円控除は「マイホームを売れば誰でも使える」という制度ではありません。
居住状況や売却相手との関係、過去の特例利用など、一定の要件があります。
そのため、適用できるかどうかは個別に確認する必要があります。
8.10年以上住んでいたマイホームには「軽減税率」の特例も
さらに、売却した年の1月1日時点で、そのマイホームの所有期間が10年を超えている場合、一定の要件を満たせば「軽減税率の特例」を利用できる場合があります。
3,000万円特別控除後の課税長期譲渡所得金額について、
6,000万円以下の部分
→ 所得税10%+住民税4%
6,000万円を超える部分
→ 所得税15%+住民税5%
という軽減税率が適用されます。
なお、所得税には復興特別所得税が加算されます。
9.相続した実家・空き家を売却するときにも特例がある
相続した実家を売却するときに、ぜひ確認しておきたいのが、
「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
です。
一定の要件を満たす場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる場合があります。
また、2024年1月1日以後の譲渡について、相続人が3人以上の場合は、一定のケースで控除額が最高2,000万円となります。
ただし、この制度には建物の築年数や相続後の利用状況、売却方法など、さまざまな要件があります。
「相続した空き家だから3,000万円控除が使える」とは限りませんので注意が必要です。
10.相続した不動産の「取得費」はどうなる?
相続した不動産を売却する場合、
「自分が相続したときの評価額が取得費になる」
と思われる方もいらっしゃいます。
しかし、原則として、相続した土地や建物の取得費は、被相続人がその不動産を取得したときの購入代金や購入手数料などをもとに計算します。
つまり、親が昔購入した土地を相続して売却する場合、親が購入したときの資料が重要になります。
さらに、相続した不動産について相続税が課税されている場合には、一定の要件を満たすことで、相続税の一部を取得費に加算できる「取得費加算の特例」が利用できる場合があります。
11.実際にどれくらい税金がかかる?計算例
ここでは、一般的な土地を売却したケースで考えてみます。
例:3,000万円で土地を売却
売却価格:3,000万円
取得費:1,500万円
譲渡費用:100万円
の場合、
3,000万円-1,500万円-100万円
=1,400万円
となり、譲渡所得は1,400万円です。
この不動産が長期譲渡所得で、特別控除などを利用しない場合、概算では、
1,400万円 × 約20.315%
=約284万4,000円
が所得税・住民税等を合わせた税額の目安となります。
一方、マイホームで3,000万円特別控除の適用要件を満たす場合、
1,400万円-3,000万円=0円
となるため、課税譲渡所得金額は0円となります。
このように、同じ3,000万円で不動産を売却しても、取得費や譲渡費用、所有期間、利用できる特例によって税額は大きく変わります。
※上記は制度を分かりやすく説明するための概算例です。実際の税額は個々の事情によって異なります。
12.「売却価格-購入価格」だけで計算するわけではありません
不動産売却時の税金について、
「3,000万円で買った土地を4,000万円で売ったから、利益は1,000万円」
と単純に考えてしまうことがあります。
しかし、実際には、
売却価格
-取得費
-譲渡費用
-適用できる特別控除
という形で計算します。
取得時や売却時にかかった一定の費用を考慮できるため、購入価格と売却価格だけを比較して判断することはできません。
13.売却して「損」をした場合は税金がかからない?
売却価格より取得費や譲渡費用の合計額が大きい場合、譲渡所得はマイナスになります。
例えば、
売却価格:1,500万円
取得費:2,000万円
譲渡費用:100万円
であれば、
1,500万円-2,000万円-100万円=-600万円
となります。
この場合、通常の不動産売却における譲渡所得は発生しません。
ただし、土地や建物の譲渡損失を給与所得などと自由に相殺できるわけではありません。
一方で、一定のマイホームの売却損失については、条件を満たせば損益通算や繰越控除が利用できる特例があります。
14.不動産を売ったら確定申告が必要?
不動産を売却して譲渡所得が発生した場合、原則として確定申告が必要です。
また、3,000万円特別控除などの特例を利用する場合も、確定申告が必要となるケースがあります。
譲渡所得の申告は、原則として不動産を譲渡した年の翌年2月16日から3月15日までに行います。
例えば、2026年中に不動産を売却した場合は、原則として、
2027年2月16日~3月15日
の期間に確定申告を行うことになります。
2026年分の確定申告期限は、国税庁によると2027年3月15日(月)です。
15.不動産を売る前に確認しておきたい書類
不動産売却後の税金を正しく計算するためにも、売却を検討している段階から資料を確認しておくことをおすすめします。
特に、
・購入時の売買契約書
・建築時の請負契約書
・購入時の領収書
・購入時の仲介手数料の領収書
・登記費用などの資料
・土地や建物の改良工事に関する領収書
・売却時の仲介手数料の領収書
・測量費など売却に直接かかった費用の領収書
などです。
特に、相続した古い不動産の場合は、取得時期や取得費を確認するための資料が重要になります。
16.不動産売却時の税金は「売却前」に確認することが大切
不動産を売却した後に、
「思ったより税金がかかってしまった」
ということにならないよう、売却を検討する段階で税金について確認しておくことが大切です。
特に、
・マイホームを売却する
・相続した不動産を売却する
・長期間所有している土地を売却する
・取得費が分からない
・建物を取り壊して土地を売却する
・買い替えを予定している
といったケースでは、利用できる特例によって税負担が変わる可能性があります。
まとめ
不動産を売却したときの税金は、「売却価格そのもの」にかかるわけではありません。
基本的には、
売却価格-取得費-譲渡費用=譲渡所得
をもとに計算し、そこから適用できる特別控除などを差し引いて、課税譲渡所得金額を求めます。
また、
所有期間5年超かどうかによる税率の違い
マイホームの3,000万円特別控除
10年超所有のマイホームに対する軽減税率
相続した空き家の3,000万円特別控除
など、さまざまな制度があります。
そのため、「不動産を売ったら税金がいくらかかるのか」は、売却価格だけでは判断できません。
不動産の売却を検討されている方は、購入時の資料や相続関係の資料などを確認し、利用できる制度がないか事前に確認しておくことが大切です。
なお、税制上の適用要件は個々の状況によって異なります。具体的な税額や特例の適用可否については、税務署や税理士などの専門家への確認をおすすめします。
※本記事は2026年9月時点の国税庁公表情報をもとに、不動産売却時の税金について一般的な内容を分かりやすくまとめたものです。個別の税務判断を行うものではありません。